―――…さて一方、こちらは倉庫内。否、倉庫内入り口付近。
 

連絡先を交換し合っている様子を食い入るように監視…、じゃない、観察(と盗聴)していた弥生は「あれは乙女のニオイだよ」ジトーッと光景を見つめていた。


同じくジトーッと監視、じゃない観察(と盗聴)しているココロは「や…やっぱりですか」ちょっと狼狽気味。

揃って堤ひなのから乙女のニオイがすると口ずさんでいた。


「絶対あれ、狙ってるよね。狙っちゃってるよね! 連絡先を上手いこと手に入れたって顔してるもん、あの子!」


「ですよね、ですよね! 私も初対面から薄々感じてはいたんですよ。
なんというか…、すっごくケイさんに対してフレンドリー過ぎて。
執拗にケイさんに頼むなんておかしいと思ったんです。き、きっと出展話を契機に繋がろうとっ…!」


「あるあるー! 私もハジメに繋がろうとしようとあれやこれや根回ししたもん!」


「え゛?」暴露話に傍で聞いていたハジメが表情を強張らせる。

そんなことお構いなしに弥生は敵手の出現だと、ココロに気を引き締めるよう喝を入れた。 


恋愛はお互いに恋して終わりじゃない。

恋に落ちた後こそが勝負どころ。


なにぶん、どこにでも敵手が出現するものだ。

片思い時代よりも両思い時代の方がとてもとても大変なのだと、恋愛経験が豊富な弥生は初心者に諭す。

 

「恋はね、いつだって戦争なんだよココロ。何もしないでジッとしていると、あっという間に恋なんて終わっちゃう! それの代表例がヨウだよ!」



ゲホッ!


これまた傍で煙草を吸っていたヨウ、弥生の発言に精神的45のダメージなり。


「弥生。テメェ人の失恋を…」


咽ながら弥生を睨むが、彼女の知ったことじゃない。

友達のために恋のあり方を諭そうと弥生も必死なのだ。


特にココロは引っ込み思案が目立つ。

出逢った頃よりかはマシになったが、自己主張はまだまだ下の下レベル。


それでは恋の戦争に勝利できない!
 

「あの子とケイは習字で繋がっているみたいだけど、ココロ、負けちゃ駄目だからね!
ネガティブはノンノンノンセンキュー! ウジウジはバッテン、オドオドもバッテン、負のオーラもバッテン!
自信を持ってケイにアタックしていかないと、絶対恋戦争に負ける!

いつも勝つ気持ちでいること! ケイを取られたくないでしょ?!」


「と、取られたくないです!」


「じゃあ勝つ気持ちは大切だからね! 大丈夫、ケイの気持ちは完全にココロへ傾いてるから!
……だけどあの子、すっごく積極的だよね。お調子乗りに見せかけたアタックなんて…、ケイがノリに弱いってこと熟知してるよ」