「お嬢様、覚えていらっしゃいませんか」 眉を下げて、なんだか寂しそう。でも、どうしても思い出せない。 「爺やから聞いて駆けつけたんですが」 わたしは、一度人と会ったら、忘れないタイプ。でも、この人は――? 「こちらは、お嬢様の……」 爺やが説明しようとする声をその男子がスッと手で制止する。あなた、何者? 「階城眞輝(カイジョウ シンキ)。結愛ちゃんとは結婚の約束もしてたんだよ」 ――はい? 爺や以外が、絶句した。