ダン…ダン…


2人きりになった体育館に
ボールの音が響く。


ワンオンワンの勝負。


ハンデで川瀬は左手だけ。


「あっ、おまえ…

それ、卑怯だろっ(笑)」


川瀬の右側ばかりを狙ってドリブルで抜いた希が
シュート体制に入る。


中学に入ってからも
シュート練習だけは毎日のように続けていた希のシュートは

キレイにリングに吸い込まれた。


「やった、あたしの勝ち」


うれしそうに笑う希に
川瀬が苦笑いを浮かべる。


「おまえシュートのフォームきれいだな。

自分で練習したの?」


ボールを拾った希が
もう一度リングを狙う。


「はい、好きなんで。

でも…あっ」


希の手からボールが放たれる。


さっきとは違い、少し軸のずれたボールが
リングに当たって…


落ちてきたボールを川瀬がリバウンドを取って
リングを狙う。

身長175cmと、バスケ部員にしては普通の身長から放たれるシュートは
ごくごく一般的なものでスリーポイントでもなければ
ダンクでもない。



それなのに…

高いジャンプ力に
目を奪われるほどのきれいなフォームが
希の胸を高鳴らせる。





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