希がコートの隅っこに遠慮しがちに立つと
体育館に笛の音が鳴り渡った。
その笛を合図に試合形式の練習が開始される。
男バスの練習を目の当たりにして…
希が目を丸くした。
すごいとか…
次元が違うとか…
色々思うコトはあるのに…
とにかく迫力がすごくて…
希は目の前の試合に釘付けになっていた。
その中でも一番動いてシュートを決めているのが…
川瀬だった。
さっきの犬みたいな愛嬌のある笑顔とは違い…
真剣な表情を浮かべる川瀬はまるで別人で…
初めて練習を目の当たりにしたからなのか
迫力がすごかったからなのか
…真剣にバスケをする川瀬を見たからなのか…
希の心臓が騒いでいた。
バスケットボールが弾む音に似た重い音が
希の体に鳴り響く。
第二印象は…
『真剣にバスケに取り組む人』
胸のドキドキは…
まだ自分でもなんなのか分からなかった。
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