~川瀬~
第一印象は『幼い1年生』
第二印象は『頑張り屋のマネージャー』
それが変わったのは、希が委員会の会議で
部活に遅れた時…
「あれ、藤倉は?」
川瀬の言葉に後輩が答える。
「あ、委員会の会議で遅れるそうです」
「へぇ、珍しいな」
そんな軽い会話を交わして…
いつも通りの練習を始める。
希は特に練習に加わる訳でもないし
コートの横で雑用をしてるくらいだから
部員としてはいてもいなくても
ケガでもしない限りは関係ない。
それなのに…
希がいないだけでなんとなく落ち着かなくて…
川瀬が何度も体育館の入り口に視線を移す。
「恭、どうかしたか?
なんか集中力ないな」
部員に注意されて愛想笑いを返した時…
「遅れました~」
希の声が体育館に小さく響いた。
ドリブルの音でかき消される程度の声なのに
川瀬の耳にはしっかり届いて…
いつも通り、ベンチに座る希の姿に安心した自分に気付いた。
『好き』
気付いたところで伝えることはできなかった。
振られたら…
その不安があったのも事実だったが…
楽しそうに部活をする希に
気まずい雰囲気を与えたくなかった。
引退するまで
希に見届けて欲しかった。
一緒に頑張りたかった。
それでも大きくなった川瀬の気持ちはところどころで溢れてしまって…
合宿の時
夜2人きりになった時、隣で星を眺める希を思わず抱きしめたくなった。
希が風邪で学校を休んだ時、
心配で家の前まで行って…
チャイムを押すことができなくて希の家を眺めながらメールを送った。
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