川瀬の言葉に体育館が静まり返って…


希が呆然としながら口を開く。



「…先輩、今…」


「藤倉が好きだって言ったんだけど」


今度は希を見ながら言った川瀬に
希がペタンとその場に座り込む。



「うそ…」



「なんでだよ。


…オレが勝ったら告白するつもりだった。


負けたのにしちゃったけど(笑)」



少し苦笑いを浮かべる川瀬が
希の目の前にしゃがみこむ。


その表情は優しいのに真剣で…


2年間も一緒にいたのに
希の知らない顔だった。



「…で?


…いらない?

今なら造花のおまけつきなんだけど」


川瀬の言葉に希の目に一気に涙が浮かんできて…


その涙をこぼしながら希が必死に笑顔を作る。



「いる…」


思いっきり泣きたかったのを押さえて
無理矢理笑った。



いつも笑顔の川瀬には…

笑顔で返事をしたかったから…




必死に笑う希を川瀬が優しく笑いながら抱きしめて…

深いため息をついた。


「やっと言えた…」



必死に我慢してた涙が

川瀬の言葉に…

抱きしめる腕の強さに…


希の頬を流れていく。



自分が川瀬の腕の中にいるなんて信じられなくて…


振られることも考えてただけに
うれしくてうれしくて仕方なくて…


ずっと触れたかった川瀬をぎゅっと抱きしめ返す。



それでも夢じゃないかと思うくらい
実感がわかなかった。



「もう一個おまけつきなんだけど…


欲しい…?」



抱きしめたまま川瀬が言った言葉に
希がゆっくりと頷く。


「…うん」




その言葉に川瀬が希の顎を持ち上げて―――…





ドキドキ煩い心臓を感じながら…



希が目を閉じた。






…FIN…

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