「希、来たよ!」
校門で川瀬を待っていた希を叩きながら奈美が興奮気味に言う。
そんな奈美に叩かれながら…
希が震える手を握り締めて奈美が見ている方向に目を向けた。
そこには…
バスケ部員と一緒に体育館から出てくる川瀬の姿があって…
遠目に見ただけなのに
心臓が飛び上がった。
学ランを第三ボタンまで開けているせいで
中の白いYシャツが見えている。
学ランの左ポケットにはピンクの造花がつけられていた。
「希、ちゃんと言える?」
かなり緊張した様子の希に
奈美が心配そうに声を掛けた。
「うん…」
告白の言葉はもうずっと前から決めていた。
『ずっと好きでした』
と
『第二ボタンください』
もし振られても
川瀬の中学3年間をずっと一緒に過ごした制服のボタンが欲しかった。
『なんで第二ボタン?
何番目でもよくない?
ってゆうかボタンより
ジャージとかユニフォームとかの方が欲しくない?』
奈美にそう言われた時には川瀬の紺色のジャージが頭に浮かんで…
『ジャージをください』
本気でそう言おうかと迷った。
でも…
『でもジャージとかくれって言われたら軽く引くかも』
翌日ケロッと言った奈美の言葉でやっぱり第二ボタンに戻した。
川瀬を囲む集団が…
ゆっくりと希のいる校門へと近づいてくる。
だんだん近づく川瀬にドキドキが最高潮に達して…
くじけそうだった。
あまりの不安と緊張に
隣の奈美の腕を掴んで引き返したくなる。
足が震えて…
体中が震えて…
まるで体が固まったように動かない。
川瀬が近くまで来た瞬間…
「きゃあっ!!」
突然、後ろから突き飛ばされた希が川瀬の前に飛び出た。
後ろを振り返ると爽快に笑う奈美がピースサインを送っていて…
「よっ」
前を見ると川瀬が希に笑顔を向けていた。
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