―持ち主がいない為に、だ。

効果を消したとしても、このスケッチブックに宿った憎しみまで消し去ったとは思えない。

今後、何らかの別の力が働かないとも言えない。

それを分かっていて、再びこの店に置こうとしているのだ。

憎しみの連鎖を、断ち切るつもりなど最初から無かったのだ!

「ウチはお客様のご要望の品を売る店ですからね。…特にあの人とこのスケッチブックの相性は良かったみたいですし」

そう言って床に落ちたスケッチブックを拾い上げる。

「それはお前が作った物か?」

「いいえ。俺は品物は扱いますが、作り出すことはしませんよ」

「ならどこで手に入れた!」