月の下でキスと罰を。

 蘭子の時に覚えたあの感情は、まだ心の中に渦巻いて時折、首をもたげる。じりじりと体を焼くように。

 瀬良の所に歩いて行く足が欲しい。

 掴む手が欲しい。名を呼ぶ声が欲しい。こんな硬い体なんかじゃなく。

 瀬良を包み込める暖かく柔らかな体が欲しい。

 瀬良、あたしはあなたが居ないと、ひとりぼっちになる。



「瀬良くん」


 瀬良は、薄いシャツの上から、見れば柔かだと分かるカヨの体に手を這わせる。背中にかかる黒髪を触って。


 その動きに合わせて、カヨの息は荒くなり、声はあたしの耳を引き裂く。