自宅に戻ると、瀬良はあたしを工房の椅子に座らせた。そして、柔らかい筆であたしの顔を優しく払う。埃があったようで、筆は少し汚れた。 「月。もう泣かなくていいよ。どこにもやらない」 ふふっと微笑んで、あたしの髪の毛を撫でた。 「悪かった。ごめんよ」 瀬良が頬を寄せてきた。あたしは、それでとても幸せで、胸が熱くなっていった。 瀬良は、あたしの頬や髪を撫で、触って、優しく見つめていた。あたしも、見つめ返した。嬉しくて幸せで、何度も瀬良の名前を呼んだ。