「呪われてるんじゃないの、その子……」 言ってから、蘭子は口に手をやる。 あたしの頬を拭う瀬良の手が止まった。 少しだけ長い沈黙が、その場に流れた。聞こえるのは、瀬良の呼吸の音。 「……返して、いただけませんか? 月を」 久しぶりに、自分の名前を呼ばれたことに気付いたのは、瀬良の問いに蘭子が答えた時だった。 「返す?」 蘭子は、顔色がますます悪くなっていた。 「お金はお返ししますから」 「ちょ、ちょっと」