月の下でキスと罰を。

 カチッと音がして、ケースが開けられる。新鮮な空気と光が入ってくる。するりと瀬良の指が伸びてきて、そしてあたしの頬に触れた。

「……あっ!!」

 あたしも声をあげた。二人には聞こえないでしょうけれど。

 ビリリと電気が走り、そして熱が体に充満した。

「どうしたの?」

「いえ……」

 新しい人形を作っていること、来客、最近はきちんと温かい食事を食べているらしいこと、そして時折、蘭子がやってきて抱き合う。

 あたしが居ないあの家でのことが、一瞬にして見えた。

 いま、二人は繋がったんじゃないかしら? 瀬良が声をあげたのは、もしかしてあたしの中の映像が見えたからじゃないかしら?

「これは……」

 端正な顔立ち、表情を少し震わせながら、瀬良はあたしの頬を再びなぞる。あたしの頬は、どうにかなっているのだろうか。

「……泣いてるのか、月」

 泣く。あたしが泣いている?