月の下でキスと罰を。

 そういえば最近、変わったことがある。それは、ガラスケースからは出されないけれど、蘭子がケースの戸を開けるようになったことだ。空けて、そして怪訝な顔をする。

 最初は不思議そうに見ているだけだったけれど、最近は眉間に皺まで寄せて。

「なにかしら、これ……」

 あんたの顔のほうがなにかしら、だわ。


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 *


 それから数日して、蘭子の家のインターホンが鳴る。そして足音。

「これ、見て欲しいの……」

 そしてあたしが飾られているリビングに顔を出したのは、瀬良だった。あたしは嬉しくて嬉しくて、微笑んだ。瀬良に向かって。

 二人は、あたしが入れられているガラスケースの前に立って真面目な顔で何やら話をしている。
 早く、このケースから出して抱き上げてくれないかしら、瀬良。

「この子、これは涙じゃないかしら」