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眠ってしまっていたようで、ケースの振動で目が覚めた。
薄暗い瀬良の家とは正反対、白く光って眩しい部屋の、ガラスケースの中にあたしは押し込まれた。どうやら専用に作ったものらしく、ドール用の椅子に座った状態でガラスケースに入れられた格好だ。
息苦しい。
あたしはこれからずっとこのままなの? まさか。冗談じゃない。
ガラス一枚隔てて、蘭子があたしを見ていた。真っ赤な唇を半開きにして、うっとりと、撫でるようにあたしを見ている。あたしが魅力的だから見ているのだろうとは思うけれど、それの他にきっと、瀬良と抱き合った時の事も思い出しているんだろう。
一生懸命考える。
ここに入れられて、ずっとこのまま?
あたしは人形で、飾られればたしかにそのままなのだ。自由にしていられたのは、瀬良の家に居たから。ああ、これからもう瀬良に会えないという事……?
瀬良が作った人形だから、どうしようと瀬良の勝手なんだ。そうだった、自分が特別だと勘違いをしていた。瀬良が作る他の人形達と違うと思っていた。
だって、彼らはあたしみたいに心が無かったから。
あたしにだけ心が宿ったから、特別だと思っていたの。
悲しい、悲しい。
心がここから抜け出て行けるなら、瀬良のところへ戻るのに。
悲しい、悲しい。



