「行ってきます」


目が覚めても、絢音さんや登駕とかのことが頭を回って離れないままだった。祐李に電話したとはいえ。


「……はぁ」


じんわりと汗がにじむ。重いかばんがいつもよりさらに重いのは、気のせいだと思いたい。


右に、左に足を動かして歩いていたら、会いたいけど会いたくない。そんな人がいたわけで。


「輝くん」


今日は野球部が朝練だからサッカー部は休みみたいだ。小さく呟いた名前は空気に溶けていった。