心臓が口から出るほど、とはきっとこういう事だろう。

だって、絶対にここにいるはずのない人が目の前に立っているのだから。

「ど、どうしたんですか?
帰りは明日のはずでは…。」

すっかり覚めた酔いと、幻でも見ているのかと疑いたくなる状況…。

「だ、か、ら。
誰?あの男。」

そうだこの人は、自分への答えが先なのだ。

間違いない、本物だ!!

「あのっ、野口先輩です。
昨日会った…高校の時の先輩で…スタジオの…。」

私を見つめる瞳がとても冷たく感じられて、上手く言葉が出なかった。

どうしてそんな顔するの?

私、何かした?

「会議が早く終わったから、最終で帰って来たんだ。」

ここでやっと、答えをくれた。