もちろん、雨が降り止んだわけではないし、ザーザーと雨の音だけは存在している。
ただ少し変わったのは、そのザーザー音が何かに弾かれるようになっただけ。
私の真上には、真っ赤な傘がさしてあって。
目の前には、よく知る顔の男が私を見下ろしていた。
「風邪、ひくよ?」
―…笹岡 爽。
私のクラスメートの1人で、人なつっこい人気者。
佑くんの、親友。
『…別にいいもん。』
どちらかといえば、今は思いっきり雨に濡れたい気分だった。
泣いてる顔を爽くんに見られたくなくて、私は顔を隠すように視線をずらす。
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