爽くんと、興奮気味の梨花の会話なんて、耳に入ってなかった。 耳や、視界。全てがただただ、一点に縛り付けられたように動かなくなっていたの。 ――これさえも、今思えば、不幸への前兆だったんですか…? 「俺、職員室で聞いちゃったんだけど!」 職員室、という単語を聞いて、なんとなく胸がドキッとした。 思い浮かぶのは、あの悪戯な笑顔。 冷たい、指輪。 どことなく嫌な予感がするのは、なぜなんだろう。