でも、言えない。 私は何も言えない。 だって私たちは、言葉で交わした仲ではないから。 “恋人”ではない私は、何も言うことはできない。 「……美優。」 先生が、髪を撫でる手を止めないまま、いつもになく真剣な声を出したから。 震える心をこらえながら、視線だけ先生の方に向ける。 先生は真っ直ぐと、私だけを見ていた。 「俺だけを、信じればいいから。」