だって、ほら。 「…美優、もう大丈夫。」 最初に抱きしめたのは私なのに、それを解くのは先生だから。 なすがままに先生を離すことしかできない私には、きっと先生は捕まえられない。 『……。』 先生が私の腕をほどく時。 何気なく私の肩に触れて、その時に感じた感触。 ―――指輪、の存在。 先生は出会った時からずっと、指輪を離してはくれない。 片時も離さずに、薬指につけている。