いつだって、視界に入る“それ”。 先生の細い手先の中で、甚だしい存在感を示している、 ――――指輪。 『……ねぇ。』 先生に敬語を使わなくなったのは、いつからだろう。 確実に距離が近くなっていた私なら、なんだって聞けるような気がしていた。 『――その指輪、どうしたの?』 先生の顔が一瞬強張ったあとに後悔したって、もう遅い。 「……。」 先生は、指輪を手のひらで隠した。 無意識なんだろうけど、まるで触れるなとでも言うように。