夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

最終回。


9回、表。


試合はクライママックスを迎えようとしていた。


1点勝ち越しての、南高の攻撃。


歓声とブラスバンドの演奏が渦を巻く中、アナウンスが流れる。


「8番、ファースト、遠藤くん」


3球目を空振りして、ワンアウト。


「9番、ピッチャー、夏井くん」


3球を見逃して、補欠でツーアウト。


「1番、サード、五十嵐くん」


イガグリも3振。


あっという間に攻撃は終わり、すぐにやって来た9回の裏。


「せ、先輩」


今まで特に緊張もしていなくて、平然と先輩と話していたのに。


いざ、9回の裏を迎えた途端、異様な緊張感があたしに襲い掛かった。


不快な汗を、両手に握っていた。


「この回、守り切ったら南高の勝ちだよね?」


「そういうこと」


でも、と先輩が低い声で言った。


「もし、2点入れられたら、サヨナラで負ける」


あたしはゴクリと息を飲んだ。


西工業高校の応援スタンドの盛り上がりが最高潮に達した。


見ていられなかった。


補欠が放った一球を、打者がカーンと一発、軽々と打ち返したのだ。


「ぎゃ……」


腕の中から落ちそうになったあたしを、先輩がとっさに抱きかかえる。


「おっと、興奮しすぎ。体にさわるよ」