夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

補欠が滅多に見せない「笑顔」は、ダイヤモンドよりも眩しい。


あれは、スペシウム光線並みに眩しい。


ああ、眩しいったらないわ。


今。


その貴重な笑顔が、あたしだけに向けられたものだとすれば。


今。


あたしは宇宙で一番、幸せな女だ。


そのスペシウム光線を、一生、独り占めしてやりたい。


そう思った。


「補欠ーっ!」


左手をブンブン振りながら、あたしは必死に叫んだ。


「部活、頑張れー!」


笑って。


もっと笑ってよ、補欠。


補欠が笑ってくれるなら、あたし、世界中を敵に回してもいいんだ。


「また、明日なーっ!」


補欠はやっぱり呆れたように、少し困った顔で。


照れくさそうに笑って小さく頷き、あたしに背を向けた。


黒いスポーツバッグがピカッと光を放つ。


そして、後ろを向いたまま、携帯電話を握り締めている左手を一瞬だけ上げて。


補欠は青空の下を一気に駆け抜けて行った。


あたし、知ってるんだ。