大好きな母があたしのせいで泣いているのに。
掛ける言葉を探しても、見つけることすらできなかった。
ごめん、母。
あたし、どうすればいいのか……分からん。
あたしはあたしで、いっぱいいっぱいだった。
脳腫瘍です、と言われて。
覚悟はしていたつもりだったのに、その衝撃は思いの外大きくて。
今更、今になって、母の涙を見て、衝撃を受けていた。
さすがに、堪えた。
確かに、良性なのかもしれない。
でも、今一度、詳しい検査をしてみなければ正確な事は分からない。
あたしは、一瞬でも大好きな補欠のことを忘れてしまうほど、堪えていた。
その衝撃を全身で受け止められるほど、16歳のあたしはまだ大人じゃなかった。
詳しい検査をして、もし、悪性でした、なんて言われてみろ。
どうすりゃいいんだ。
母は、今以上にもっと泣いてしまうだろう。
呆然と立ち尽くすあたしの手を掴みながら、母が苦しそうに声を絞り出した。
「お前は、あたしとたっちゃんの希望だった。あんたは、特別な子だよ、翠」
希望。
特別。
「もちろん、大反対されたさ! 高校生が、って。後ろ指さされた。でも」
つい、後ずさりしそうになった。
「陸上辞めて、学校辞めて、人生全てを投げ出したとしても、この子は絶対産むって」
「……」
「だって、どうしてもお前に会いたくて。翠……」
顔を上げた母は涙で濡れた天使みたいに、優しい顔をしていた。
掛ける言葉を探しても、見つけることすらできなかった。
ごめん、母。
あたし、どうすればいいのか……分からん。
あたしはあたしで、いっぱいいっぱいだった。
脳腫瘍です、と言われて。
覚悟はしていたつもりだったのに、その衝撃は思いの外大きくて。
今更、今になって、母の涙を見て、衝撃を受けていた。
さすがに、堪えた。
確かに、良性なのかもしれない。
でも、今一度、詳しい検査をしてみなければ正確な事は分からない。
あたしは、一瞬でも大好きな補欠のことを忘れてしまうほど、堪えていた。
その衝撃を全身で受け止められるほど、16歳のあたしはまだ大人じゃなかった。
詳しい検査をして、もし、悪性でした、なんて言われてみろ。
どうすりゃいいんだ。
母は、今以上にもっと泣いてしまうだろう。
呆然と立ち尽くすあたしの手を掴みながら、母が苦しそうに声を絞り出した。
「お前は、あたしとたっちゃんの希望だった。あんたは、特別な子だよ、翠」
希望。
特別。
「もちろん、大反対されたさ! 高校生が、って。後ろ指さされた。でも」
つい、後ずさりしそうになった。
「陸上辞めて、学校辞めて、人生全てを投げ出したとしても、この子は絶対産むって」
「……」
「だって、どうしてもお前に会いたくて。翠……」
顔を上げた母は涙で濡れた天使みたいに、優しい顔をしていた。



