「…美風…?」


肝心の美風と言えば、ボクの胸に顔を隠してしまった。
耳が赤いのは、夕日のせいだと思いたくない。


「…顔っ…上げられないですっ…。
ははは恥ずかしくてっ…。」

「それって恥ずかしいのは同じ気持ちだからって、思ってもいい?」


しばしの沈黙の後、胸に伝わる縦の振動が肯定を理解させてくれた。


「…そっか。嬉しい。ありがとう、美風。」

「わわわ…私の方こそ…あ、あありがとうございますっ…。」

「今度星来に報告しに行こうね。きっと喜んでくれるから。」

「せ、星来様にですかっ!?そんな恐れ多い…っ…。」

「えーだってボク、みんなに自慢したいんだもん、美風のこと!」

「無理ですぅー…。」


ボクは腕の中の美風をさらにぎゅっと抱きしめた。
小さく悲鳴を漏らすものの、少しだけ身を預けてくれる美風に何だか嬉しくなる。


「あ、そうだ!今度から今日みたいに重いもの持つの禁止!
美風は細かい作業中心で仕事してね!」

「で、でもっ…作業場には荷物がたくさん…。」

「ボクが心配だから危ないことやっちゃダメー!」

「で…でもっ…!」

「聞きわけ悪いとちゅーしちゃうからね!?」

「ひゃあ!む、無理ですぅー…。」





* * *


「まーったく。〝桃色の恋〟なんて、甘酸っぱくて見てらんない。」


*fin*