「きゃあっ…こここ怖いですっ…!」

「怖いならボクに掴まってればいいよ。」

「そそそんなっ…そんなの恐れ多くてっ…。」

「ねぇ、美風。」

「…はい…?」


美風がゆっくりと顔を上げる。
空が綺麗なオレンジ色に染まっている。
―――もう夕暮れ時だ。アクアマリンの空は澄んでいて綺麗。


「さっき、白斗に先越されちゃったけど…。
いつもありがとう。ボクの傷に気付いてくれて。治してくれて。」

「そ…そんな…わ、私なんかにそんな言葉は勿体ないくらいで…。」

「丁度節目の1年…だったから、ちゃんと言いたかったんだ。
〝ありがとう〟って。助かってるよ、って。」

「わわ私…や、役に立てていますか?」

「うん。すごく役に立ってるよ。
美風が来てくれてから、ボクはとっても楽しいし、嬉しい。
…美風がボクの傍で笑ってくれるから。」

「えっ…?」


少し戸惑うように視線を泳がす美風。
その頬が明るいのは、照れのせいなのか夕日のせいなのかは分からない。





「一目惚れ、って言ったら美風は信じてくれる、かな?」

「ひっ…一目惚れっ…だ、だだだ誰が…ですかっ?」


あまりに間抜けな返事が返って来て、ボクは小さく苦笑した。


「もちろん、ボクが美風に、だよ。」

「ひゃぁ!そそそんなこと…ほほほ…本当ですかっ…?」

「ボク、嘘は好きじゃないよ?」


美風の瞳を見つめ、続きの言葉を口にした。




「ボクは美風が好きだよ。
ボクに笑いかけて、傷を治してくれたあの日から。」


あの日から、君はずっと傍にいてくれた。
笑ってくれたんだ。