「もしかして、『ヒール』の使い手?」

「白斗様にはととと遠く及びませんがっ…
掠り傷くらいなら治せますっ…!
だから私に治させてください…。」


声は確かに震えていたけど、意志を貫きたいと強く思っていることはひしひしと伝わって来た。
だからボクは頷いたんだ。


「お願いします。」

「はいっ!」


固かった表情がそこで一気に崩れた。
その瞬間を、ボクはとても鮮やかに覚えている。


ぱあっと明るい光が差し込んだかのような笑顔に、ざわついていたはずの胸がトクン、と一度だけ鳴った。


それと同時にかざされた小さな手。
迷いなく響く『ヒール』という声。
傷が光って3秒後にはもう何もなかった。
―――傷跡も、痛みも。





「ありがとう。
…ねぇ、美風、って呼んでもいいかな?」

「ももももちろんですっ…というかそそそんなっ…恐れ多いっ…!」

「ぷっ…!恐れ多いって…ボク、そんなに大した奴じゃないよー?」

「充分すごい人ですっ!」


ほんのりと頬を赤く染めてそう言った美風は確かに女の子で。
…ボクの知る限り、一番可愛い女の子で。


それはまさに〝一目惚れ〟だったんだ。