星来の髪が優しく香る。
その香りが心を落ち着けていく。


「未来の…夢…?」

「そう。別にお前と違って予知夢じゃねーけど。」

「…男の子と女の子が髪の色が逆のあたしたちみたい。」

「な。それは俺もちょっと思った。」

「ちっちゃい蒼刃、可愛い!」

「俺よりも目つき悪いよな、そいつ。」

「えー同じだよー!」

「んなことねぇよ。」

「…蒼刃、ちゃんと〝お父さん〟の顔してる。」

「〝お母さん〟いなくて焦って起きたんだ。
一番大切なやつが傍にいない未来なんて…有り得ねぇ。」

「…そう…は…?」


自然と腕の力が強くなる。
言葉にしても、不安が消えない。


…あの日の星来がフラッシュバックする。
〝消えてしまうのではないか〟と。


「…あたしはここにいるよ。今も、未来も…ずっといるよ。蒼刃の傍に。」


星来の細い腕が俺の背中を優しくさする。
甘えだって分かっている。
こうしてもらうことが情けないって思う時もある。
だけどそれ以上に…


こいつがいない時間を思い出すたびに心が強く抉られる。
思いださなければいいのに、呪いのように何度も何度も蘇る。


言葉も表情も、あの時の気持ちも全て。