「ったく…華央の考えてることは難しくて、俺には理解出来ねぇ。」

「…私が考えていることなんてとても単純よ?」

「どこがだよ?」

「同じことしか考えてないもの。」

「同じこと?」

「ええ。」



想うのはたった一人。
幸せであってほしい、笑顔であってほしいと願うのはたった一人。
…出来ればずっと、私のことを覚えていてほしいと祈るのも…あなたのことがとても大切だから。



「…涙出てんぞ。」

「…見ないフリしてよ。」

「紫紀じゃねぇからなー俺。それは無理だ。」

「紫紀も見ないフリなんてしてくれなかったわ。」

「…男なんてそんなもんだ。
女の涙を見ないフリなんて出来ねぇ。」

「困っちゃうわ。」



思い出す。
もう二度と戻ることの出来ない日々を。
幸せだった過去を。



「さよならは言わない、だろ?」

「…ええ。」


雪に溶けてしまおう。
幸せそうな二人が見れたのだから。