「…瑠香…?」

「やっぱり華央を探すぞ。」

「俺は会えたらでいいって言っているだろう?」

「そんな儚い想いなら消えてしまうぞ。」

「消えない。有坂華央は俺の中では決して。
だからお前がそんなに頑張ったりしなくていい。」



そう言いながら、握る手に力を込めてくる朝霧紫紀。
私はもう握り返していないというのに。



「それにしても瑠香…。」

「なんだ?」

「お前の手は冷たいな。とても。」

「…ならば離せ。」

「いや…しばらくこのままでもいいか?」

「な…。」

「この冷たさが妙に心地いい。」

「華央に怒られるのは御免だ。」

「華央は怒らない。
きっとどこかで笑ってる。
こんな雪の中に大の大人が二人で空を眺めてるなんて…とか言ってな。」

「…そうか…。」



雪はやはり止みそうにない。
このまま立っていれば、雪になれそうな気さえしてくる。


真っすぐに雪だけを見つめるその横顔を盗み見て、私はそっと、その手を握り返した。



「お前の手も冷たい。とてもな。」

「冷たいもの同士が握っていたら、いつか温かくなるかもしれない。」

「…お前の方が夢見がちだ。」

「…そうかもしれないな。」