虹が見えたら


翌朝、すっかり寝不足状態で起きたなるみは伊織の運転する車の中で爆睡していた。

シートベルトはしているものの、体が横にズズ~~~っと倒れる。



「伊織、ちょっと車をとめてくれ。
やっぱり後ろいくわ。」



「責任でもとるつもり?
昨日、うちのかわいい妹に何のセクハラでもしたの?
安心して眠れなかったみたいだけどさ・・・」



「いや、セクハラなんてしてないって。
ちょっと寝顔見たいかなって隣に布団をずらしただけで。」



「まぁ、俺は相手がおまえさんならかまわないと前から言ってるけどな。
ただ、温泉でのんびりしようとやってきて疲れきってる妹を見ると、考えることが多くてな。」




なるみが目を覚ましたのは伊織の住んでいるマンションに着いたときだった。

「あ、ふぁぁぁぁ・・・やっと着いたの?
あれ?え?えぇぇぇぇーーーーーー!」



目を開けたなるみのこめかみあたりに重みと体温を感じ、そこには眠そうな目をしながらなるみを見つめる真樹の顔があった。


「お疲れ様。もっとお昼寝につきあってあげたかったんだけど、これから仕事してこなきゃいけないから、寮まではお兄さんに送ってもらって。」



「あ、は、はい。もどるなり仕事って大変ね。
あ、それと・・・いろいろありがと。」




「いいえ、どういたしまして。
よかったらまた行こうね。
じゃ、行ってきます。」



真樹を見送って、なるみはふと思ったことを言葉にした。


「私のしゃべり方が変だよね。
タメ口と敬語が入り混じって自分の言葉じゃないみたいなの。
真樹さんは気付いてるかな。

こんな変な会話いつまで続けたらいいのかな。」