伊織を布団ごとまたいで自分の布団に向かおうとしていたなるみだったが、真樹の言葉をきいて急に真樹の布団の中に入り込んだ。
「おわっ!な、なるみちゃん・・・そ、そんな大胆な。」
「私のためにここへ連れてきてくれたの?
オジサンたちのリフレッシュじゃなくて・・・私の修学旅行の予行演習なの?」
「う~~ん・・・どっちもかなぁ。
楽しく過ごせれば目的なんてどうでもいいんじゃないかな。
伊織がね、なるみちゃんはずっと家で貧乏と戦ってきたからお泊り経験がないっていうものだからね。」
「ないってことはないんだけどね。
小学校以来かもしれないわ。
旅行鞄持つとなったら、きっとそれは夜逃げのときねってお姉ちゃんと話してた思い出があるけどね。
あ・・・変なこと言ってごめん。
真樹さん、ありがとう。
じゃ、おやすみなさい・・・」
なるみが真樹の布団から出て自分の布団に入ると、今度は真樹がなるみの布団にもぐりこんできた。
「な、ななな・・・なぜ?」
「いい匂いがするから。
うん、ここの方が寝心地よさそう。」
「あの、お兄ちゃん起きたら何ていうつもりなんですか?」
「じゃあこうすればいいんじゃないかな。」
真樹は自分の布団をなるみの横にくっつけてなるみのかぶっている掛け布団の中にもぐりこんだ。
「あまり解決になってないみたいなんですけど。」
「僕は寝てしまうととても寝相が悪いので、気がついたらきっとなるみちゃんにぶつかってしまってると思うんだ。」
「あの、そんな勝手なぁ・・・」
「心配はしなくていいって。何もしないから。
それとも、何かしてほしい?」
「しらないっ!!」
なるみは真樹に背中を向けたまま、小さく震えていた。

