なるみがうれしそうな顔で説明しているのを見て、桐谷はなるみの手をとり、抱きしめた。
「笑っているなるみちゃんを見るのはとてもうれしいけど、あの人のことをうれしそうに話されるといい気分がしない。
きよしから聞いたんだ。その保護者の真樹さんってなるみちゃんと血がつながってないって・・・。」
「あの・・・先生?」
「これだけ運命の出会いしちゃったんだから、僕も保護者志願してもいいかな。
いや、恋人志願の方がいいかな。」
「えっ。でも私は、まだ高校生だし・・・。
大人の人とお付き合いなんて敷居が高いっていうか、どうしたらいいのかわからないっていうか・・・。」
「いきなり、その大人の男の家に泊めてくれって押し掛けてきたのに今日はあのときと違って、遠慮がちなんだねぇ。
もしかして、好きな人ができたとか?」
「えっ・・・そんなことないですよ。
ちゃんと血のつながった兄も寮で働いていたことがわかりましたし、真樹さんは兄の主ですから。
あ・・・なんか短い間にいろいろわかったことがあって、それで私さびしくなくなったんです。」
「そっか。まぁそういうことでもかまわないけど、家も近いことだし同じ道を歩いて行く者どうしとして・・・いや、違うな。
僕は気に入ってしまったんだ。君といっしょにいる時間をね。
今日も楽しかったよ。ここからは残念だけど、ひとりで戻った方がいいね。
また時間があったときにでも、付き合って。
じゃ、また園の方も来るんだよ。」
なるみは、好きだという感情をぶつけたり、ぶつけられたりしてお互いがわかったとして、その後にはいったい何をどうすればいいのか理解不能だと思った。
真樹にしても桐谷にしても自分のことを好いてくれているのだというのはわかっても、その後ってどうするつもりなのか。
((やっぱり結婚なのかな。それとも体の関係?))
「あーーーー!ダメダメ。目の前のやらなきゃいけないことが1番だもんね。」
寮にもどって部屋に入ると、真樹がなるみのベッドで眠っていた。
きっと仕事を終わらせてあわててもどってきたのだろう。
なるみも歩きまわって疲れたので、ベッドの空きになんとか転がると睡魔に負けてしまったのだった。

