虹が見えたら

『規模は小さな会社ですけど、うちに来ませんか?優秀なんでしょう。
あの・・・僕は育児なんてやったことはありませんが、住むところを用意したり、買い物や身の回りのことなら手伝えると思うんです。

うちのスタッフにも声をかけますから、みんなでその子を育てればどうですか?』って
私を雇ってくれたんです。」



なるみはきよしがまるで自分と同じ境遇のような気がした。
真樹とは縁もゆかりもない。
経済的にはしっかり守られているのだろう。


そして、その母親は自分と同じように真樹にあまえていてはいけないと考えている。


「あ、あのみていただけるならお願いします。
私はこれから登校させていただきますので。」



「はい。もどられるのは3時過ぎ頃ですよね。
伊織さんからきいていますので、その頃にまた交代しましょう。
私も社に出ないといけませんのでね。

それに、目を覚ましたときにあなたがいないと、社長が元気になってくれませんから。」



「あ・・・どうしてそんなこと言うんですか?」



「私は一社員。あなたはご家族だからです。
あなたがこちらにきてから、寮で食事をとりたいからってこちらによくおもどりになることが多くなったんですよ。

それまでは、いくら周りの社員が休憩するようにすすめてもなかなか食事にいってくれなかったんですけどね。
とてもあなたとのご家庭が楽しいんでしょうね。

私もね、遅くなってもきよしとできあいのお弁当でも食べられたら、とても楽しいんです。
今は、保育園で先に食べさせてもらってるので、毎日1品の手作り料理をすることにしているんです。


あ、話が長くなったらいけませんね。
早く学校へ・・・」



なるみは真樹が社員を抱え持つ社長であったことも驚いたが、自分を引き取る前も他人にたくさんの優しさを分け与えていたことに驚いた。