なるみはふぅっとため息をつくと、自然と涙が流れた。
「や、やだ。私・・・どうして。」
桐谷はなるみの手を握ってなるみの顔をのぞきこんだ。
「あ、ひどい顔してるから見ないでください。」
「見るなと言われると見たくなるよ。
あはは、冗談。
あの・・・さ。ここからは冗談じゃなくて、お願いなんだけど。」
「はい。何ですか?」
「あの、ときどき、いや、たまにでもいいから、こんなふうに会ってくれませんか?」
「えっ」
「初めて会ったときから目が離せないって思ってたけど、そんな顔見せられたらひとり歴長い男としては胸キュン状態なんだよね。
なるみちゃんの痛いところに付け入って悪いと思うんだけど、さっきの人よりかは僕は君を泣かせない。
勉強だって教えてあげられると思うしさ、どうかな。」
「はい。」
「え・・・OKってこと。でも、さっきのお兄さん・・・」
「あの人は私の保護者です。
私の学費や身の回りにかかる経費をすべて引き受けてくれた人なの。」
「保護者!?っ・・・かなり難しい関係なのかな。
まぁいいや。いちばん大切なのはなるみちゃんの気持ちだからね。
さ、寮まで送るから行こう。」
「イヤ。今、もどりたくない。
きっと待ちかまえてるもん・・・」
「よわったなぁ。いくらなんでもお持ち帰りするわけにはいかない。
家に連れ帰ったらいただいてしまうかもしれないしさ。
あ゛ーーーーーーーー!一晩、僕が寝てる部屋を決してのぞかないと約束してくれるなら、うちへ来ますか?」
「つるの恩返しですか?」

