桐谷と話していると、保育園の前の公園の側道になんとなく見たことのある車が止まった。
そして、車からきよしの母親が降り、続いて真樹が運転席から降りた。
「え・・・どうして?」
そしてきよしの母親は真樹の方に駆け寄って真樹の頬にキスをしたのがわかった。
「う・・そ。」
「おや、思ってたより若いお金持ちだね。
きよしのかあちゃんもやるなぁ。
あれ?なるみちゃん・・・どうしたん・・・えっ!」
なるみは隠れることもせず保育園から車を眺めていたせいで、真樹と目が合ってしまったのだった。
そして、咄嗟に桐谷の腕をギュッと握っていた。
桐谷が小さな声でなるみに質問する。
「もしかして、あのお兄さんはなるみちゃんの知り合いかな?」
なるみはコクンと頷いた。
「そう。こっちに来そうだけど僕にどうしてほしい?」
「・・・・・・逃げたい。ここで会ったらご迷惑をかけてしまうもの。」
桐谷はなるみの表情を少し見て、すぐになるみの腕をつかんで裏口へと走っていった。
「あ、きりちゃん先生。どこへ行くんですか!」
「わかんない。けど、今あのお方とここで会いたくないんだろ?
園長せんせ~~~!きよしの母ちゃん来ましたぁーーー!
僕はなるみちゃんを学生寮まで送ってから帰りますんで、あとをよろしくお願いしま~っす!
よし、これでいい。」
なるみは桐谷のバイクに乗せられて園の裏口から出て行った。
海岸に近いファミレスで夕飯にして、桐谷はなるみと砂浜を歩いた。
「またきりちゃん先生にご迷惑をかけちゃいました。
ごめんなさい。」
「たまにはいっしょに夕飯食べる相手がいるのも楽しいから気にするなって。
知ってる男が子持ちの女にキスされてるのを見るのはいい気分しないよな。」

