なるみは今日のことを思い返して、真樹も本当は何か怖いことのできる人なんじゃないかと感じていた。
しかし、この場ですべて断ればそれはすぐに押し寄せてきそうで、それを切りぬけるすべがないのも事実だった。
悪魔に魂を売り渡す気持ちになりながらも、真樹に説明してもらいながら1つ1つサインしていった。
「はい、これで手続きは完了だ。
じゃ、ここを引き払って行こうか。
大切なものだけ用意してくれる?残りのものは、うちの会社の者に片付けさせておくから」
「あ、あの、管理人さんはとても偉い方なんですか?」
「さぁ何をさして偉いのか、わかんないけど、こうやってここに居たり、学生寮に滞在している時間はゆったりしてるから、飛びまわって仕事をする社長ではないよ。
それと、寮に着いたらすぐに学校行って手続きするからこれに着替えて。」
真樹はなるみに学校の制服を渡した。
「すてきな制服。あれ・・・もう1つのこっちの服は?」
「そ、それはね・・・僕が選んだご挨拶がわりの服。
メイド服もかわいいと思うけど、こういうのもどうかなぁ・・・って。
あ、とくに深い意味はないから。」
「わぁ~上品でかわいい。
真樹さんってふわっとかわいいのが趣味なんですか?」
「いや、べ、べつに・・・その、お店の人にね。」
「そうそう~~~真樹はかわいいものが大好物なんだよ~」
「きゃぁ!!!!」
突然、なるみと真樹の間に割って入ってきた長身の男がそう言った。
「こらっ、伊織!来たならちゃんとノックくらいして入ってこい!」
伊織と呼ばれたこの青年は本業は学生寮虹色のコックだと自己紹介した。
そして、副業が真樹の執事だとも説明した。
「はぁ・・・よろしくお願いします。」

