まるで、大人のキスを強要されたときのような表情で真樹はなるみを見ている。
なるみはこんなことになるのが嫌だから言わないでいたのに・・・と思った。
((お仕置きとかってどうにかされちゃうのかな。
軽蔑されるよりはその方がいいのかもしれない。))
黙っているなるみに真樹は突き放すようにして帰っていってしまった。
なるみの目から涙が出てきた。
一方、真樹は管理人室で伊織にお茶を入れてもらっても気がおさまらない様子で声を荒げた。
「完全にひかれちゃったよ。
あそこまでなるみちゃんを追いこんで何を聞きたかったんだろうな。
自分があまりに嫌味なやつになっていくから、逃げてきた。」
「なるみに男ねぇ・・・足をみればすべて解決だったんじゃないのか?」
「あ・・・」
伊織はクスッと笑いながら、
「おまえさんは自分が数あまたな女からモテるという意識もないヤツだからなぁ。
案外、なるみは肩透かしくらって泣いてるんじゃねえの。
黙っていれば強引な大人のキスが来るんじゃないかと夢見る乙女が思ってたらどうする?
いや、お互い真面目な性格なのはいいことなんだろうけどね。
ここは不純異性行為禁止なんだし。」
「そ、そうなのか?
なるみちゃん、実の兄の存在を知ってから僕を避けるようになったし、今の学費以外世話させてくれないんだ。
このままじゃ、保護者の地位を剥奪されそうで不安になるよ。」
伊織は真樹のアゴを片手でグイと引き上げると
「この顔とこの唇でかわいい妹の女を目覚めさせた男が、何が不安だぁ・・・。
他の男の匂いに腹がたったならお仕置きでもすればよかったんじゃないのか。
なるみと俺とはお互いにたったひとりの肉親だ。
けどな・・・もう涙を必死にこらえる子どもじゃないんだ。
子どもが産める女として、肉親以外の男は正規の方法で家族にでもならなきゃ、いられないと思う。俺はな・・・。」
「正規の方法?」

