しばらくするとなるみの前にエプロン姿の青年が駆け寄ってきた。
「足痛めたの?大丈夫?」
「いえ、あの・・・痛めてないんです。
久しぶりにたくさん歩いてきたので疲れちゃっただけで・・・。
ご心配おかけしちゃってすみません。
すぐに、帰りますから、ごめんなさい。」
なるみが立ち上がろうとすると、疲れた足はなるみのいうことを素直にきかずに軸足のバランスを崩してしまった。
「おっと・・・。かなりお疲れなんだね。
そこの保育園でお茶でも飲んでいきませんか?」
「で、でも、お仕事のおじゃまですから。」
「あ、うちの保育園夜中はやってないんで、こいつのお迎え待ちで業務終了です。
じゃ、そういうことで失礼。」
いきなりなるみはお姫様抱っこされたまま、道を隔てた保育園へと連れていかれた。
医務室で靴ずれになりかけているところに薬を塗ってもらい、お茶を出してもらった。
「ねぇ、ずっと公園で子どもたちが遊んでるのを見てたよね。
それにここの先生の様子も。
君、もしかして保育の仕事がしたいと思ってる?
あ・・・名前よかったらきかせて。
僕はこの名札のとおり。桐谷輝明といいます。」
「私は、山田なるみです。
もうすぐ高校を卒業するんですけど、やりたいことが見つからなくて悩んでたんです。
それで、今日は社会人ウォッチングしてて・・・気がついたら。」
「ここにたどり着いちゃったと・・・あははは。
じゃ、どうですか?こんな社会人と話してみた感想は?」
「普通・・・。普通じゃないのかな?
ちっちゃいときは子どもとして先生にかまってほしかったものだけど、今は先生が普通の大人に見えるというか・・・先生って感じがしなくて。」
すると公園にきてくれた幼児が走ってきて、なるみにこう言った。
「きりちゃん先生はドジでお間抜けな独身だから、先生らしくないんだよぉ!」
「こらっ、きよし!」

