虹が見えたら


「あ、あれ、ここは・・・」


「あなたの部屋です。はじめまして、わたくし、この寮の寮長をしております。
3年の松田由起子と申します。
オーナーからあなたのことを頼まれましたので、安心してくださいね。」



「オーナー?管理人さんは・・・」


「管理人はこの寮でのですけど、他にもアパートやマンションを経営なさっておられる方なのでわたくしはオーナーってお呼びしております。
許可さえもらえれば、どんな呼び方をしてもかまわないってご自身はおっしゃっておられましたわ。

あ、今はべつのお仕事で出かけられているんですよ。
あなたがご苦労なさっておられることもお聞きしました。
わたくしたち、この虹色の寮生はあなたがどんなド貧乏な方であっても歓迎いたしますわ。」


「は、はは・・・それはどうもありがとうございます。」


「ここまで来られるのにもご苦労があったのでしょうね。
過労で倒れるなんて、ここの学生では考えられませんもの。」



「この学校って・・・どういう学校なんですか?
学費はお高いんでしょうか?」



「ん~~~そりゃ公立の学校に比べると私学ですからその分高いでしょうけど。
あなたは何も心配することはないじゃないですか。」


「えっ?」



「オーナーのご家族の恩人なのでしょう?
だからあなたをここにご招待したとききました。
わたくし、あなたのご家族のことをきいて胸が熱くなりましたわ。

恩返しを受けるべきだと思います。
一時的援助は恥じることはありませんわ。
わたくしたち寮生も応援しますから、ここにずっとお住まいなさい。」



「は、はぁ・・・」


なるみは由起子が部屋を出ていってから、すぐにもとの自分のアパートへと帰っていった。
話があまりに出来過ぎているような、人が親切すぎるような気がして、現実にもどって考えることにしようと思った。