なるみは恐る恐る部屋をのぞいてみた。
「わぁーーーーーーー!ステキ。
今住んでるとこより広くて、かわいい。
女子寮ってこんなにかわいいですね。」
「気にいってもらったかな。ここは新しくてね、うちのような民間会社の物件を学校に採用してもらった寮なんだよ。
以前は学校がすべて管理していたけれど、それだと中がすさんだり、管理も行き届かなかったりで寮の費用もとれないからね。」
「すごくいいのはわかるんですけど、私のバイト料じゃ家賃が払えないです。」
「バイトはすぐにやめなさい。学費と寮費は僕が払いますから心配はいりません。」
「で、でも!そんな。出していただいても将来的にお返しできるかどうか・・・。」
「返す?そんな心配は無用です。
あくまでも父が受けた御恩を返すのはこちらですから、何も返さなくていいんです。」
「でも、それはお父さんどうしの話ですし、いいお話すぎて・・・私。
どうせ生活費だって稼がないといけないし。」
「ああ、真面目な人ですね。そんなじゃ、生活費も私が面倒をみるといってもきいてもらえなさそうですね。
じゃ、こうしましょう。
僕の仕事の手伝いをしてください。
簡単な仕事ですから、ちょっとだけ研修すればできます。
たぶん、将来的に役にたつと思うし、お給料はきちんと支払いますよ。」
「えっ、私を雇ってくれるということですか?」
「学校の方にも私から報告しておきますから、堂々とお仕事できます。
ただ、学問との両立はきついでしょうけどね。
どうです?やってみますか?」
「そういうことなら、やらせてください!
ああ、なんか夢みたいです。よか・・・た・・・。」
「あっ、なるみちゃん!」
なるみはホッとするなり、真樹の腕に倒れ込んでしまった。
真樹はなるみが発熱しているのに気付き、なるみをベッドに運び、学校の医務室に連絡をいれた。
ちょうど、近所の診療所の医師が学校にきていたので、処置が早くて済んだ。

