虹が見えたら


真樹の言葉に祐司は喜び、なるみは真樹に疑問を感じた。


結局、祐司は出されたケーキをたいらげて、なるみが姉の写真や思い出の品をいつ持ってくるのかを約束して、帰っていった。



「ねぇ、ほんとに私が高倉くんとデートしてもいいの?」


「いいんじゃないの、若いんだから。
それに、彼は硬派みたいだし、普通の家庭の人でしょ。
僕のマンションに住んでたとは知らなかったけど・・・。

それと、なるみが朝そういう出会いをしてマネージャーまで引き受けてあげたなんて話も僕は聞いてなかったんでね。」



「だって・・・誤解されちゃうと思ったから。
高倉くんね、お兄さんがいて、お兄さんが死んだお姉ちゃんの彼氏だったの。」


「えっ。」



「お姉ちゃんとちょっとした行き違いがあったときに、お姉ちゃんが死んじゃって、私が掃除してたら、お姉ちゃんと間違えて後ろから抱きつかれてしまったの。

あ、高倉くんが違うって引き離してくれて、説明したら謝ってくれたよ。
それでお兄さんとお姉ちゃんの誤解も解けてね・・・時間できたら遺品を持っていくって約束したの。」


「そう。それで、なるみは高倉くんのことはどのくらい好きなのかな?」



「わからないわよ。噂とか見かけよりも真面目だし、いい友達だとは思うけど、交際してって言われて、交際って何をするのか質問しちゃった。

いきなり部屋のすみに追い込まれてキスされたりしたら意識しちゃうのかもしれないけど。

大人の男の人って、キスした女のプライベートにはとくに感心がないものなのかな。
それとも、その程度のこと・・・で済ませられちゃうとか。


あ、それは真樹さんだからなの?
高倉くんのお兄さんはお姉ちゃんのこと忘れられないって言ってた。
お姉ちゃんとは愛され度がきっと違うのかもしれないね。


じゃ、部屋にもどるね。ごちそうさまでした。」

なるみはそそくさと自室にもどってしまった。




ひとりでテーブルの上を片付ける真樹に伊織が声をかけた。

「ケーキと皿が無事で何よりだ。」