祐司が管理人室に入ると、なるみが驚いた顔をしていた。
「あれ、高倉くん・・・どうしたの?」
「どうしたのはこっちが聞きたいよ。
何も言わないで、残念会来ないから体の具合でも悪くしたんじゃないかと思って心配になってさ。
女子寮に勇気だしてやって来たんだから。」
「クスクス・・・そうなんだ。ごめんね。
てっきり先輩が臨時マネージャー終わりって言ってくれてるものだと思ってたから。
あ、もうすぐね~ケーキ焼けるから、食べていけばいいよ。」
「うん、さっき真樹さんにそう言われた。
きれいで、気さくで優しそうな人だね。
俺、君にバイトを強要するような怖いおっさんのイメージがあったから、びっくりした。」
「怖いおっさん・・・あはははは。
ある意味そうかもしれないわ。
門限とか、規則正しい生活とか・・・けっこう毎日うるさいからね。」
「え、そんなにうるさいの。
じゃあ俺たちの交際なんて認めてもらえなさそうだね。」
「交際って・・・まだ何もしてないけど。」
「だから、これから先のことだって。
デートもできないのは嫌だし、隠れたり、嘘ついたりして会うのもうしろめたくて苦しいと思うんだ。
けど、学校でしか会えなくて、クラスも部活も違ってて、そんなの俺・・・」
「堂々とデートに行けばいいじゃないか。
ただし、寮の門限には遅れないように帰宅すること。だけどね。」
いつのまにか祐司の後ろから、真樹がケーキをお盆にのせて入ってきていた。
「デートしてもいいんですか?」
「推奨はしていないけど、若いんだからすべてダメとは言えんでしょ。
陰でこそこそと良からぬことをされて、お嫁にいけないコにされるのは困るし。
君はスポーツマンだし、女性には困ってない状況にある中で、なるみちゃんをここまで誘いにきたってことは真剣なんだろうなって同じ男としてわかるよ。
なるみちゃんが高倉くんとのデートを望めば、僕が止めても意味がないでしょ。」

