なるみは寮の管理人室で数学の宿題をしていた。
臨時マネージャーをしていると、夜は疲れて眠ってしまうことが多かったので、普通の試験勉強では期末試験は危機状態だったのだ。


「これが終われば無事に夏休みをむかえることができるんだ・・・!」



その頃、残念会を抜け出してきた祐司が虹色寮へとなるみを訪ねてきていた。
寮の門をくぐったところで、祐司は真樹に呼び止められた。


「何の用だい?
ここは女子寮だからね、誰に何の用事で来たか管理人室に届けてくれないかな。」


「あ、すみません・・・あっ・・・もしかして管理人さんって真樹さんですか?」


「ん?そうだけど・・・」


「僕、サッカー部の高倉って言います。
山田が、もとぃ、なるみさんが残念会出ないで帰ってしまったってきいて・・・どうしたのかと思って・・・。」



「へぇ、君が高倉くんね。遠足の時になるみをおぶって帰ってくれたコだね。
なるみなら、そこの管理人室で数学やってるよ。

補習が完全に終わったわけじゃない身分で、臨時マネージャーを引き受けちゃったものだからね、勉強が滞ってるんだって。
高倉くんは優秀で人気者なんだってね。

よかったら君も勉強していかない?
もうすぐケーキも焼けるからいっしょに食って行きなよ。」



「え、女子寮入ってもいいんですか?」


「個別の部屋は禁止だけど、管理人室と会議室はOKだよ。
もちろん僕の許可がないとダメだけどね。

今日は、僕が君をご招待するから。あははは、ささやかなお礼させてね。」



「お、お礼だなんて!お礼を言うとしたら俺の方です。
うちのマンションの掃除になるみさんに来てもらって、俺も兄貴もうれしいです。」



「うちのマンション?」



「はい、あなたがオーナーでなるみさんが週2回掃除にきてくれてるんですけど。」



「そうなんだ・・・悪い。バイトの管理は別の人がやってるもんだから。
そういう縁もあったわけね。どうぞ・・・入ってて。
僕は食堂行ってケーキ持って来るよ。」