虹が見えたら

管理人室は8畳間に応接セットが置いてある簡単な部屋だった。
そこの奥には小さな生活スペースがあるように見える。


「はい、お疲れさま。
今ちょうどお茶をきらしてしまっていて助手に買いに行ってもらってるんだよ。
かわりにこれ、昨日僕が作ったしそのジュースだけど飲んでみて。」


「へぇ、名前はきいたことありましたけど、飲むのは初めてです。」


「そう。朝、寮生にちょっと飲んでもらったら、味が薄いって文句言われたんだけど、僕は甘すぎるのは苦手でね~どうかな?」


「あ、おいしいです!私も甘いものは好きですけど、この味だったら甘くない方がたくさん飲めます。」


「そ、そう!うれしいな。
あ、じゃあ早速これ。書類用意しておいたから順番に記入していってくれる?」


真樹は編入届から寮の手続きにいたるまでの書類をまとめてなるみの前に差し出した。


「あの、私まだこちらにお世話になるって決めたわけじゃないんですけど・・・。」


「えっ・・・そう。ごめんね・・・ひとりで浮かれちゃって。
でも、ここに決めてもらえるようにがんばるよ。

あのとき、僕の父が君のお父さんを招待しなかったら、君はひとりぼっちにならずにすんだはずでしょう。
原因は交通事故でも、きっかけを作ったのは僕の家族だからね、親の予定だから知りませんってわけにはいかない。

それもまだ未成年だとわかった以上、責任とらせてほしい。

うちは父が刑務所に入ってたときに母が出ていってしまったんだ。
子どもは兄と僕の2人。

兄貴はアメリカで実業家になってあっちで家庭をもった。

それで僕は、父の後を継いで、管理人とか不動産関係の仕事をしてる。」



真樹はなるみの部屋ももう用意してあると言った。