祐司は兄に何か小声で言うと、
「これは神様がくれたメッセージなのかもしれない。
君が弟と出会ったのも縁なんだろうね。
もしよかったら、今度時間のあるときにお姉さんのことを聞かせてほしいんだが。
あ、思い出すのがつらかったら、無理にとは言わないから。」
「私はかまいませんよ。
そうそう、あなたの写っている写真とか手紙とかあるんです。
私が持っていても仕方がないので、お持ちします。」
そして、なるみは制服に着替えて祐司と登校する。
「まさか高倉くんのお兄さんがお姉ちゃんの彼氏だとは思わなかったなぁ。
家に訪ねても来ないって思った時もあったから、その程度なのかなって感じだったけどお兄さんにはお兄さんの事情があったんだよね。
わかって本当によかった。
あんなにお姉ちゃんのことを思っててくれたのに・・・」
「思い過ぎだ!」
「え?高倉くん。」
「言わないでおこうかと思ったんだけど、兄さんはときどき現実が見えなくなるときがあるんだ。
さっきだって、山田に抱きついて冬美って言っただろ。
冬美さんが亡くなる前にけっこうがんばってた研究が行き詰って結局、論文にできなかったんだ。
それで、ちょっと腐ってたところに相談にのってもらおうと思ってた彼女の死でさ。
そこからかなりおかしくなって、冬美さんの写真をずっと眺めている日もある。」
「そうだったの。
お姉ちゃんの思い出の品なんて、逆効果かしら。」
「あのさ、俺も同席していいかな。
さっきみたいなことがあったら心配でさ。」
「クスッ・・・((高倉くんって真樹さんみたいなことを言うのね。))
もちろん、同席して。
お姉さんの彼氏と2人っきりって私も困るし。」
「それと・・・さ。頼みがあるんだけど。」
「頼み?なに?」
「県大会が終わってからもマネージャーでいてくれないかな。」

