虹が見えたら


「そんな・・・ひどいわ。」


「同い年だからね、そうならざるを得ないだろうとは思ってたけど、何年後かに迎えに来るからとも言わなかったそうだ。

なるみちゃんは以前はお父さんやお姉さんに守られて暮らしていたんだ。
もちろん、恋に発展するような出会いもなかったからかもしれないけど。

でも、これからは違うよ。
かわいいからっていろんな男が近づいてくると思う。

だからこれだけは約束して。
自分ですべて解決しようとしないこと。
事細かく何をしてたかは聞かないけど、遠まわしでもいいから誰とお付き合いしてるのか教えて。」


「いや・・・そんなの。」


「なるみちゃん・・・」


「このあいだも言ってたよね。
私はお姉ちゃんに彼氏がいたのも知ってたけど、お父さんは知らなかった。
それはお姉ちゃんがお父さんにはまだ言う時期じゃないって思ってたのを知ってたから。

ほんとの親子でも言えないこととか言いたくないことってあると思う。
だからって毎日家庭内が息苦しいわけでもなくて。

助けてもらったのに、我がまま言ってごめんなさい。」



「謝ることはないよ。そう言われてみれば本物の親子なんてそうかもね。
僕も親父に言わなかったことはたしかにある。
だからかもしれない。
なるみちゃんのことを知っておけば守りやすいと自分勝手に思ってたんだね。

実際は目を離せば、持っていかれてしまうというのに。
でも困ったなぁ。なるみちゃんが僕に何も教えてくれないなんてことが起こったら。」



真樹は俯いてまた少し悲しげな表情に変わった。
この表情になるみはいちばん弱いと思いながら、真樹の頬に手をかけ、呟いた。

「伊織さんの前でもないのに、そんな顔するなんて反則だよ。
寮のみんなも学校の女の先生だって、何もなければ真樹さんのこと狙ってるんだよ。」



「え・・・なるみちゃん。突然、何を言ってるの?」



「今さらとぼけてもだめなんだからね。
そのルックスでそんな顔すれば、みんな言うこときいてくれるんでしょ。
伊織さんも何でもきいてくれるんだよね。

なんか思いあがってるみたいで気に入らない。
勝手に管理人室に入ってごめんなさい。部屋にもどるわ。」