真樹は長野の襟元をつかんで立ち上がらせると、出口を開け外へと放り出した。
「僕が拳をあげないうちに、帰れ!
それと、あんたの補習は受けさせない。あんたの出方次第では、校長にすべて話すからな。
今回は僕の監督不行き届きもあるから、事をあらだてやしないけど、あんたの言葉が誠実ではなかった場合は許さない。」
真樹はそれを言い終わるとピシャッと扉を閉め、なるみに駆け寄った。
「自分で立てないみたいだね。どうしてすぐに僕の携帯に連絡しなかった?」
「遠足の帰りは高倉くんが保健室までおぶってくれたし、治療受けてからは杖使ったらひとりで帰れたから。
でも、管理人室をのぞこうと思って階段下りてきたら倒れて・・・そこに先生がきてて、補習のプリントを持って来てくれたんだって。
上にまた上がるのも困ったから、ここで補習授業してもらったの。
それで・・・」
「それで・・・どうした?まだ何か隠しているのかい。」
真樹の表情がまた冷たくなりかけたことに気付いたなるみは思わず、長野にキスされたことを話した。
「なっ!・・・・・あいつ。」
「ちがうの。たぶん、倒れるときの勢いで触れただけかも・・・。」
「それでもだめだ! 責任さえとれれば何をしてもいいわけじゃない。
なるみだってわかってるんでしょ?
好きな人ができて、恋人としてお付き合いをして、もっともっとその人を好きになって、ずっと死ぬまでその人と連れ添っていたいなと思って結婚したいって。
その前の恋をするのも知らないんじゃつまらないと思ってるでしょ?
僕はなるみが好きになった人とその段階ふんでくれれば、何度恋愛してもいいと思うよ。
けど、里奈ちゃんみたいに踏み外しちゃったら。
里奈ちゃんね、真剣に彼を愛せてよかったって言ったけど、すぐ近くの未来はシングルマザーなんだ。」
「ええっ!?」
「親御さんのところに挨拶しに行って来たんだ。
退学だから寮は関係ありませんって行動はとりたくないから。
認知はしぶしぶすると言ったらしいけど、彼は里奈ちゃんを捨てたよ。」

