なるみは離れようとしたが、びくともしないし、余計に抱きしめられてしまう。
好かれるのはうれしいと思ったが、あまりの急展開に怖いと思ったなるみは、
「私を好きなら無理やりはいやっ!」
咄嗟に叫び声が出た。
そして、長野が言葉にはっと腕をゆるめたとき、なるみは別のすごい力で腕をひっぱられた。
「ああっ!」
「何をした?こんな時間に管理人室に勝手に入って、何をしたんだ!」
なるみは少し震えがちな声をして、今にも長野に飛びかからんばかりのすごい形相をしている真樹を見て、動けなかった。
「勝手に部屋を使用させてもらってすみません。
補習授業をここでやりました。」
「へぇ・・・あんたの補習授業ってのは、生徒を膝の上にのせてやるのか?
これから無理やりなるみに何をさせるつもりだった?」
「信じてもらえないかもしれないですが、僕は真剣になるみさんと将来を考えてお付き合いしたいと思っているので、正直にいいます。
捻挫のために、よろけたなるみさんを受け止めてるうちに下心が抑えられなくなりました。
でも、さっきの言葉ではっと目が覚めました。
ほんとに、体の関係を迫りに来たんじゃないんです。それだけは信じてください。
僕は大学にもどってきちんと論文も仕上げて、卒業したら家業の農家を継ぎます。
そしたら、なるみさんを迎えに来ます。」
真樹は先ほどの凍りつきそうな冷たい表情ではなく、困った顔をしながらなるみに質問した。
「なるみは農家に嫁ぐつもりになったのかい?」
なるみは首を大きく横に振って、
「農家を継ぐって話までは聞いたけど、私を迎えにくるなんて・・・今初めてきいて。
私は先生と結婚なんて、考えたことない。
まだ補習だって2週間ほどしかやってないし、いきなりすぎてそんな。
ちゃんとした恋愛もしたことないのに、どうしたらいいのかわからない。」

