「管理人室です。」
なるみがそう言い終わらないうちに、長野はなるみをかつぎあげ、管理人室へと運んだ。
「失礼しま~す。あれ・・・誰もいないけど。」
「せんせ~降ろしてください!たぶんお仕事でいないんだと思います。」
「あ、よっと。おっそうだ。
ここから2階へ上がるのも大変だから、ここで補習しよう。
ちょうどいい机や椅子もあることだしな。」
「そ・・・それは・・・」
今や私専用の机と椅子ですというのもはずかしくて、なるみは笑ってごまかした。
教室で補習授業を受けるのと同じくらいの時間が過ぎたくらいに、長野は終わりを告げた。
「ああーーーーっ終わったぁ!
遠足で疲れてるのに、ほんとに先生鬼ですって。
そだ、コーラでも飲みませんか?
ここの冷蔵庫にあるんです。」
「おい、勝手にいいのか?」
「いいんです。こっちのジュースは私専用ですし、他のもお客様用だから、ぜんぜん大丈夫ですよ。
あ、先生って教える科目は数学なのに、がっちり体型ですよね。
何かスポーツしてるんですか?」
「今は週に1回程度しか通えないんだが、柔道をね。」
「それでかぁ・・・私、簡単に受けられたり、担がれたり。あはは。
高倉くんの背中にもヒョイだったから、びっくりしちゃいましたよ。
はい、どうぞ。」
なるみが長野の前にコーラの入ったコップを置いて、引っ込めようとした手を長野はぐいとひっぱった。
そして自分の膝の上になるみを横向きに座らせると、軽くなるみの唇にキスをした。
「あ・・・」
「ほんとは補習の最後の日にって思ってたんだけど、俺は実家が農家だから、実際のところは先生にはならないつもりなんだ。
こんな先生だったら失格だし。
けどな、俺は真剣だから。
一目みたときから、かわいくてかまいたかった。」

